色盲の遺伝
色盲や色弱(色覚異常)が遺伝であることはよく知られています。実際には先天性と後天性がありますが、そのほとんどが先天性のものであり、遺伝によって伝えられます。
遺伝による色盲や色弱(色覚異常)の割合は男性の約20人に一人とされています。学校であれば1クラスに一人いるということであり、とりわけ稀なことではありません。
色盲や色弱(色覚異常)の程度は人によって異なり、色覚検査によって指摘されない限り気付かない人もいれば、社会生活に支障を感じるという人もいます。
色覚異常の遺伝は複雑で、家系に色覚異常の方がいなくても、色覚異常の遺伝子を受け継いでいることもあり、その場合は突然のように色覚異常の子どもが生まれます。
色盲や色弱(色覚異常)の遺伝の形式は、「X染色体性劣性遺伝」あるいは「伴性劣性遺伝」と呼ばれるものです。
性別を決定する性染色体には、X染色体とY染色体があり、男性の場合はX染色体とY染色体を一つずつ(XY)1対持ち、女性はX染色体のみ二つ(XX)持ちます。
色覚異常の遺伝子はX染色体上にのみ存在します。
男性はX染色体を一つしか持たないため、このX染色体が色覚異常の場合は、必ず色盲か色弱が発現します。
対して女性は、二つ持っているX染色体のうちどちらかが正常でさえあれば、色覚は正常となるのです。このように、同じ遺伝子のうち、一方の染色体の方遺伝子が正常であれば影響が現れない遺伝子を劣性遺伝子と呼び、二つある遺伝子(XX)の両方共が異常遺伝子のため色覚異常になることを「劣性遺伝」と言います。
さらに、男性と女性で、性染色体上の遺伝子の伝わり方が異なるのが「伴性遺伝」です。
色盲や色弱(色覚異常)は伴性遺伝であり、その遺伝子を父親が持っているか母親が持っているかによって、子どもへの遺伝子の伝わり方が異なり、子どもへの現れ方も男子と女子とで異なるとされています。
色盲や色弱(色覚異常)の遺伝のパターンは下記の6通りとされています。
- 父親、母親ともに正常色覚の場合は、子供は全て正常色覚。
- 父親が色覚異常、母親が正常色覚の場合は、息子は全て正常色覚、娘は全て保因者(色覚は正常)。
- 父親が正常色覚、母親が色覚異常の場合は、息子は全て色覚異常、娘は全て保因者(色覚は正常)。
- 父親が正常色覚、母親が保因者の場合は、息子の半数は色覚異常、娘の半数は保因者(色覚は正常)。
- 父親が色覚異常、母親が保因者(色覚は正常)の場合は、息子の半数は色覚異常、娘の半数は色覚異常、娘の半数は保因者(色覚は正常)。
- 父親、母親ともに色覚異常の場合は、子供は全て色覚異常。
尚、このようなに表面に現れにくい遺伝のシステムと、日本の嫁入り婚の風習、さらに兵役があった時代の視力に対する価値観が今も残っているため、日本には「嫁が家系に色盲を持ち込む」といった差別的かつ責任とする悪しき考え方がありますが、これはまったくナンセンスです。
諸外国では、色盲や色弱の遺伝を特別なこととする考え方はほとんど見受けられません。
科学的には、今まで劣性遺伝でありながら残ってきている遺伝であるのは、それでとりわけ困った先祖がいなかったか、むしろ必要なことのある遺伝子であると想定されます。
日本も、色盲や色弱であることを隠さなくてもいい、成熟した社会になることが望まれます。
2005年、眼科用語の改訂により、眼科用語からは、色盲・色弱の用語が廃止されました。
(第1色盲、第2色盲、第3色盲)
(1型2色覚、2型2色覚、3型2色覚)
(第1色弱、第2色弱、第3色弱)
(1型3色覚、2型3色覚、3型3色覚)